17周のスプーンで中野が大治郎のインに割り込み、大治郎がクロスしたラインで立ち上がり再び中野を抜き返す。嗚呼・・・めまいが起こる・・・。中野の焦りを後ろから感じたのか、宇川が動く。130Rを飛び出してシケインで中野のインに並びかける。凍り付く瞬間を征したのは宇川だ。カウルに伏せ、ストレートを加速する2台のNSR。追随するYZR。残りは2周。
大治郎はコーナー毎にマシンをスライドさせて、暴れる立ち上がりを必死にコントロールしている。物理的な限界に近い、ライディングを要求されるプライドの激突に場内は興奮のるつぼだ。ピットのモニターを見ているスタッフは声を上げて頑張れ!と祈る。優勝へのラストチャンスをかけてスプーンの進入で宇川に襲い掛かった中野だが、彼のタイヤもすでに限界を越えていた。大きくスライドしたリヤの動きをコントロールするのが精一杯で逆にやや差が広がる。優勝の行方は、大治郎と宇川の全能力をかけたシケインへの飛び込み勝負となりそうだ。マシンは互角!突き刺さるシケインへの視線!・・・
針の穴を通す程のマシンコントロールを要求される限界への挑戦。全開加速から驚異のフルブレーキングにフロントが沈む!観客スタンドが揺れた。宇川が並ぶ。大治郎はインを開けない素早い切り返しでマシンを起こしカウルに伏せながらアクセルを全開!!マシンを左に並べるように宇川も立ち上がる。絶叫!絶叫!絶叫!「行け〜大治郎!!!」歴史に残る日本GPを見守る勝利の女神は大治郎に微笑んだ。チェッカーの瞬間、大治郎はガッツポーズを見せてその歓びを現した。僅差で宇川、中野が続いてフィニッシュ。
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「やったね大ちゃん。鈴鹿GP V3!」by川平慈英さん |
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